くんくん。この独特な匂いは。
学校の廊下を玄関に向かって、ひーたんと一緒に歩く。
中庭の金木犀がこの独特な匂いの正体だ。開いている窓から抜けてくる。
「ひーたん、金木犀の匂いがするね」
もう秋なんだなぁ、つい最近まで夏だったのに。
秋の次は冬が来て、そして、春が来る。
あと、少し。
「もう秋なんだなぁ…って!梨!」
感傷に浸っていたひーたんが大声で叫ぶからちょっと驚いた。
「梨?」
梨ってあの、梨?果物の梨?
隣で歩いているひーたんの顔を窺う。
「金木犀が咲いてるってことは、梨の旬が終わってるんだよ。あー今年は食べ損ねたー」
食べ損ねたことが残念そう。
そうなんだ。それでひーたんは残念がってるのか。今年はもう終わってるなら、また来年のお楽しみだね。
「ひーたんは物知りさんだね」
そう言ってひーたんに向けて笑うと、ひーたんは何かを考えているようだった。
あ、これは。
ひーたんの手が俺の頭の上に乗る。
「来年、一緒に食べような」
来年の、約束。
『一緒に』が出来ないはずの来年の約束。
来年の春、俺はもう、ここから。
「えっ」
思考が引きずられそうになっていたところに、ひーたんの声が響く。
ひーたんが、自分の下駄箱から一通の手紙を出した。
これは、まさか!
「ひーたんにラブレター!」
ひーたんに!ラブレター!ラブレター!
「どうしよう、どこのうさぎからだろう、ひーたんは渡さないんだから!」
「どこのうさぎって、うさぎ前提かよ」
なんでひーたんはそんなに冷静なの!俺というものがありながら、他のうさぎからのラブレターだよ!
なんてぎゃーぎゃー叫ぶ俺をほぼ無視し、ひーたんは特段浮かれることもなく、ただただ冷静で、その手紙の封筒の両面をじろじろと見てる。
「やっぱ入れ間違いだな」
そう一言呟いて、その横の下駄箱を開けて、その中に手紙を入れた。
あとは何事もなかったように下駄箱から靴を取り出して、帰り支度を進める。
どうやら、ラブレターはラブレターでも、ひーたんに宛てたものではなかったらしい。ひーたんが入れたすぐ横の下駄箱はなんて人だったかな。
「帰るぞ、雪風」
ひーたんが、俺を呼ぶ。
いつもと同じように。
帰り道を歩いていても、どこからか金木犀の匂いがする。
本当に、秋なんだなぁ。
来年の秋もまた金木犀の匂いが、
あ、来た。
お前は雪子の代わりで、それ以上でもそれ以下でもない。また、それ以内でもそれ以外でもないんだよ。お前は来年の春にはこの場から居なくなって新しい場所で新しいお前をーーー
「変な電波は妨害」
ひーたんが、俺の耳を持って違う方向に向けた。
その瞬間、電波が遮断されて、我に返った。
「ひーたん」
視線を上げて思わず、ひーたんを見つめる。
ひーたんは、ちょっと不服そうな顔をしてるみたい。
なに、ひーたん。どうしたの。俺、変な顔してる?
「うち帰ったら耳外せよ」
ぶっきらぼうだけど、どこか優しげな言葉。
気付いてくれた。
「うん」
守って、くれた。
それが、その事実が、俺の胸と目尻を熱くする。
あぁ、もう!
「ひーたんすき!」
「はいはい」
ひーたんは気付いてないと思うけど、今、本当に、すごく嬉しいよ。
ありがとう、ひーたん。
*----------*----------*----------*----------*----------*
ヤヒコさんのお宅の「うさぎコンビ」の「うさぎ」こと、南野雪風の方。
お題は「金木犀、手紙、梨」でした。
お誕生日に何がいいか、となったときに求められたのが「うさぎの二次創作」だったので、軽率に二次創作しましたが、うさぎコンビが分かる人じゃないと分からない話になっていますので、ご注意ください。
こちらが同じお題の「うさぎコンビ」の「ひーたん」こと、北月日京の方。
ひーたんから見た雪風
学校の廊下を玄関に向かって、ひーたんと一緒に歩く。
中庭の金木犀がこの独特な匂いの正体だ。開いている窓から抜けてくる。
「ひーたん、金木犀の匂いがするね」
もう秋なんだなぁ、つい最近まで夏だったのに。
秋の次は冬が来て、そして、春が来る。
あと、少し。
「もう秋なんだなぁ…って!梨!」
感傷に浸っていたひーたんが大声で叫ぶからちょっと驚いた。
「梨?」
梨ってあの、梨?果物の梨?
隣で歩いているひーたんの顔を窺う。
「金木犀が咲いてるってことは、梨の旬が終わってるんだよ。あー今年は食べ損ねたー」
食べ損ねたことが残念そう。
そうなんだ。それでひーたんは残念がってるのか。今年はもう終わってるなら、また来年のお楽しみだね。
「ひーたんは物知りさんだね」
そう言ってひーたんに向けて笑うと、ひーたんは何かを考えているようだった。
あ、これは。
ひーたんの手が俺の頭の上に乗る。
「来年、一緒に食べような」
来年の、約束。
『一緒に』が出来ないはずの来年の約束。
来年の春、俺はもう、ここから。
「えっ」
思考が引きずられそうになっていたところに、ひーたんの声が響く。
ひーたんが、自分の下駄箱から一通の手紙を出した。
これは、まさか!
「ひーたんにラブレター!」
ひーたんに!ラブレター!ラブレター!
「どうしよう、どこのうさぎからだろう、ひーたんは渡さないんだから!」
「どこのうさぎって、うさぎ前提かよ」
なんでひーたんはそんなに冷静なの!俺というものがありながら、他のうさぎからのラブレターだよ!
なんてぎゃーぎゃー叫ぶ俺をほぼ無視し、ひーたんは特段浮かれることもなく、ただただ冷静で、その手紙の封筒の両面をじろじろと見てる。
「やっぱ入れ間違いだな」
そう一言呟いて、その横の下駄箱を開けて、その中に手紙を入れた。
あとは何事もなかったように下駄箱から靴を取り出して、帰り支度を進める。
どうやら、ラブレターはラブレターでも、ひーたんに宛てたものではなかったらしい。ひーたんが入れたすぐ横の下駄箱はなんて人だったかな。
「帰るぞ、雪風」
ひーたんが、俺を呼ぶ。
いつもと同じように。
帰り道を歩いていても、どこからか金木犀の匂いがする。
本当に、秋なんだなぁ。
来年の秋もまた金木犀の匂いが、
あ、来た。
お前は雪子の代わりで、それ以上でもそれ以下でもない。また、それ以内でもそれ以外でもないんだよ。お前は来年の春にはこの場から居なくなって新しい場所で新しいお前をーーー
「変な電波は妨害」
ひーたんが、俺の耳を持って違う方向に向けた。
その瞬間、電波が遮断されて、我に返った。
「ひーたん」
視線を上げて思わず、ひーたんを見つめる。
ひーたんは、ちょっと不服そうな顔をしてるみたい。
なに、ひーたん。どうしたの。俺、変な顔してる?
「うち帰ったら耳外せよ」
ぶっきらぼうだけど、どこか優しげな言葉。
気付いてくれた。
「うん」
守って、くれた。
それが、その事実が、俺の胸と目尻を熱くする。
あぁ、もう!
「ひーたんすき!」
「はいはい」
ひーたんは気付いてないと思うけど、今、本当に、すごく嬉しいよ。
ありがとう、ひーたん。
*----------*----------*----------*----------*----------*
ヤヒコさんのお宅の「うさぎコンビ」の「うさぎ」こと、南野雪風の方。
お題は「金木犀、手紙、梨」でした。
お誕生日に何がいいか、となったときに求められたのが「うさぎの二次創作」だったので、軽率に二次創作しましたが、うさぎコンビが分かる人じゃないと分からない話になっていますので、ご注意ください。
こちらが同じお題の「うさぎコンビ」の「ひーたん」こと、北月日京の方。
ひーたんから見た雪風
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