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2026/04/04 23:02 |
月見は食べない
「三連休どっか行くか?」

ベッドの中でそう訊ねると、目の前の雪風は小さく頭を振った。
今年の九月は三連休があり、その後三日働くとまた三連休がある。
その間の三日間を休みにすると最大九連休のシルバーウィークになるらしいが、二人共暦通りの動きになっているため九連休はお預けだ。
雪風は立場的に九連休に出来るのではないかと訊ねたが、雪風曰く立場的に九連休には出来ないのだそうだ。経営者一族は好きなときに休めるのかと思いきや、経営者一族だからこそ一般社員には出来ることが出来ないらしい。
なるほどと思ったが、九連休あったところで雪風の仕事が減るわけではない。ましてや休んだ分連休明けがつらくなるのだと言われれば、それ以上聞く気にはなれなかった。

『ひーたんが九連休じゃないのに俺だけ休んでも意味ないし』

とまあ、こう言われてしまうと尚更だ。
そのため九連休のことは忘れて、二つある三連休のどちらかに出掛けるかと思いきや、それも雪風は嫌らしい。

「ひーたん、どこか行きたいの?」

ベッドの中の雪風がもぞもぞと動きながら喋る。
どこかに行きたいというわけではなく、別に家にいても構わない。ただ普通の土日は家にいることが多く、折角の三連休に雪風の行きたいところがあるならばと思っただけだ。

「別に。あってもどっかで外食とかそんなレベルだな」
「外食?」

もぞもぞと動いていた雪風の身体の動きが止まった。
何気なく出した外食という単語に思うところがあるらしい。

「いや、お前が行きたくないならいいけど」
「ひーたんのごはん好きだけど、作るの大変だもんね」

こう言ってはなんだが、雪風は何故かどこの家でも食べられるような家庭料理が好きだ。南野の家ではフルコースのようなものばかり食べていたからか、普通のものを好んで食べている。それも数年経てば落ち着くかと思っていたが、この様子ではそうでもないようだ。

「フレンチのお店予約する?」

雪風が肩に顔を押し付けてきて、甘えるような仕草をした。反対の手で頭に手を置き、ゆっくりと撫でてやる。
フレンチと言うが、恐らく雪風はフレンチを食べたいわけではない。
今でもたまに接待や南野の付き合いで必要なときには、フレンチや懐石料理を食べている。あくまでも雪風にとってそれらは毅然とした態度で臨むもので、二人で食べたいものではないだろう。
二人で食べるなら、もっとフランクなものでいい。近くのファミレスやファストフードでもいいのだ。
ファミレスはどうか分からないが、ファストフードならば今の時期、大手チェーン店各種が月見関係のものを販売している。

「月見系のなんか食うか?」

確か大手ハンバーガーチェーン店が軒並み月見系のバーガーを出していた。あとチェーン店の喫茶店も大きさで勝負のバーガーを出していたはずだ。一人で食べることはなく、夕食を家で食べているためまだ二人共食べていないはずだ。毎年食べているというわけでもないが、雪風の気が進まないままフレンチを食べるのもと思ってのことだ。
特に深い意味はなかった。本当に。
だが、それを聞いた雪風は勢い良く起き上がった。雪風の頭を撫でていた手が放り投げられる。
雪風の顔は驚きを隠せていなかった。

「いつもそんなこと言わないのになんで!」
「え?」
「いつもは月見系のもの食べようなんて言わないのに」
「いや」
「なんで今年は急に?」

いや別に理由なんてない。
雪風の気が進まないままフレンチを食べるよりも、もっと気軽で手軽なものでもいいかと思っただけのことだ。
正直、月見系のものでなくてもいい。というか何でもいいのだ。雪風が外食すら嫌ならいつも通り作ってもいい。三連休だから何かしなければならないわけでもない。
思った以上に雪風の反応が真剣で、この時期の月見系のものが嫌いだったのかとまで考えた。確かに食べているところはを見たことはないし、二人で食べたこともない。

「嫌なら別にいいけど」

驚きながらもそう言うと、雪風は起き上がった身体をもう一度ベッドに寝かせた。そして先程と同じように肩に顔を押し付けてくる。

「月にうさぎはつきものだから、ちょっとびっくりした」

明らかにちょっとではなかったぞと思いながら、これまたおかしなことを言うなと思った。
そういえば数年前、ベランダで月見をしたことがあった。
あのときの雪風は楽しそうだったが。最終的に月のうさぎのことを気にしていたのだ。
それを思い出して、また先程と同じように雪風の頭に手を乗せた。先程よりもしっかりと頭を撫でてやる。

「俺のうさぎはお前だけだって言っただろ」

雪風がうさぎではなくなっても、うさぎは雪風だけだ。
それになんだかんだ言っても、雪風はうさぎに愛着を持っている。その証拠にマグカップや食器類にうさぎ柄のものがいくつかある。雪風本人が使っているマグカップにもうさぎのマークが入っているのだ。
もう耳がなくても、あの頃のうさぎを捨てても、ずっと変わらない。

「お前が嫌ならいいから」
「ひーたん、昔より優しくなったよね」
「そうか?」
「昔より甘くなったっていうか、俺のこと甘やかすようになった」

そう言われたらそうかもしれない。
昔は、それこそ学生時代は、雪風のことを不思議なよく分からないやつだと思っていた。だが今になると、捨てるものを捨てて雪風は少し身軽になったのだ。
家では昔のうさぎだった頃とあまり変わらないように見えても、一歩外に出れば完璧な南野の御曹司をやっている。会社や父親の前でこんな風に振舞うことはないのだと知っているからこそ、家にいるときは少しだけ甘やかしているのかもしれない。

「月見のやつ、食べてもいいけど一人では食べないでね。俺の見てるときにして」

月のうさぎにひーたんを盗られないように見張ってるから。

本当に、遊びなのか真剣なのか分からないが、雪風が気にするならば無理に食べる必要はない。
それよりも雪風が美味しい美味しいと、ありきたりないつもの料理を食べているのを見る方がいい。
月のうさぎよりうちのうさぎの方が大事だ。



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よるこさんのお宅の「うさぎコンビ」から。
一年ぶりなので、まず参考文献に目を通すところから、と思いきや。よるこちゃんがTwitterのアカを消していて、参考文献がほぼ消失しておりました……!何かあるなら出しといてと言ってから一か月、昔のうさぎはほぼなくてpixivも読むところから。
二年前の誕生日にいただいたはずのうさぎの「蜜を重ねる」漫画も消えていて、自分のiPhoneの写真フォルダを漁ったら出てきました。それを見て「うさぎのマークのマグカップ持ってるじゃん!」と思ったのです。
「今年ももちをつくよ」と言ってリクエストを聞いたら「大人もち」と言われたので、今年も大人もちです。よるこちゃんも大人もち描いてくれ(ぇ)
あと単純に過去の話から少しずつ取っていたりしますね。
ちなみに私は月見系のバーガーを食べたことがありません。
今年はマック、モス、ロッテリア、ケンタ、コメダ、ウェンディーズが月見系をやっているらしいですね。ウェンディーズって初めて聞いたぞどこにあるんや。
最近悲しいことがあったりして、落ち込んでいると思うけど、少しでも元気になってくれたら嬉しいな。
よるこちゃん、相変わらず大変なご時世だけど、今年もお誕生日おめでとう!
無理しすぎないようにしてね。


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2022/09/18 00:00 | 二次創作

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