「ひーたん、金木犀の匂いがするね」
学校の廊下を下駄箱に向かって歩いていると、突然雪風が金木犀のことを口にした。
確かに金木犀の香りだ。この独特な香りを間違えるはずはない。
「もう秋なんだなぁ…って!梨!」
もう夏は過ぎゆき、季節は秋に移り変わっている、と考えたところで、途端に思い出した。
「梨?」
隣を歩いている雪風がその声に反応して顔を窺ってくる。
そう、梨。あの梨。果物の梨。美味しい、瑞々しい梨。
「金木犀が咲いてるってことは、梨の旬が終わってるんだよ。あー今年は食べ損ねたー」
毎年この時期の梨を楽しみにしていたが、今年は何をしていたのか食べ損ねてしまった。今年は家に梨が無かった、というのはどうも考えにくい。ということは、知らない間に食べられているのだろう。完全に忘れられたな。
「ひーたんは物知りさんだね」
雪風が満面の笑みで笑う。
その満面の笑みが、少し引っ掛かった。
「来年、一緒に食べような」
雪風の頭に手を置き、そう言うと、雪風の表情が若干強張った。
多分、良いことは考えていない。でも、その内容が全て分かるほどの読心術を身に付けてはいなかった。
「えっ」
下駄箱に着いてみると、奇妙なことに手紙が一通。
いや、まさか、そんな。
「ひーたんにラブレター!」
一瞬心の中で思ったことを、雪風が大きな声で吐き出した。
いや、確かに見た目はどう見ても雪風が言った通りのものだが、このご時世にラブレターを下駄箱の中に入れるような古風な女子はいるのか。
これが本当に自分宛ならば、果し状の可能性もなくはないが、そもそも、果し状を貰うほどの存在感も心当たりもない。
「どうしよう、どこのうさぎからだろう、ひーたんは渡さないんだから!」
「どこのうさぎって、うさぎ前提かよ」
一人でプチパニックを起こしている雪風をいつものように宥めたが、ラブレターや果し状があり得ないのと同じ位、差出人がうさぎである可能性はあり得ないだろう。
仮にうさぎからの手紙だとしても、うさぎは一人いれば充分だ。
その手紙の封筒を裏返してみると、知った名前が書かれていた。
「やっぱ入れ間違いだな」
なんと、このような古風なことをする女子が本当にいたようだ。今時珍しい。だが、残念なことに一つ右隣の下駄箱に入るはずだった手紙のようだ。
右隣の下駄箱へ入れ直してから、靴を持つ。
「帰るぞ、雪風」
帰り道、気にしてみるといたるところから金木犀の香りがする。
秋本番だな、と思いながらふと何気なく、いやに大人しい雪風を見た。
その瞬間、何か嫌な予感がした。
咄嗟に雪風の両耳を掴んで、違う方向へ向ける。
「変な電波は妨害」
何故かは分からないが、なんとなく変な電波な気がした。確信はない。雪風にいきなり何すんのーなんてどやされるかもしれない。
気のせいなら、それでいい。
でも、なんとなく、直感で。
「ひーたん」
雪風がこっちを見ている。
あ、この顔は。
「うち帰ったら耳外せよ」
やっぱり、当たってた。
変な電波拾ってやがったな。
「うん」
さっきとは一変して、雪風はどことなく、嬉しそうだ。
なんだなんだ、どうしたって言うんだ。
「ひーたんすき!」
「はいはい」
訳は分からないが、とりあえず、うるさい雪風に戻ったから一先ず良しとする。
*----------*----------*----------*----------*----------*
ヤヒコさんのお宅の「うさぎコンビ」の「ひーたん」こと、北月日京の方。
お題は「金木犀、手紙、梨」でした。
お誕生日に何がいいか、となったときに求められたのが「うさぎの二次創作」だったので、軽率に二次創作しましたが、うさぎコンビが分かる人じゃないと分からない話になっていますので、ご注意ください。
こちらが同じお題の「うさぎコンビ」の「うさぎ」こと、南野雪風の方。
雪風から見たひーたん
学校の廊下を下駄箱に向かって歩いていると、突然雪風が金木犀のことを口にした。
確かに金木犀の香りだ。この独特な香りを間違えるはずはない。
「もう秋なんだなぁ…って!梨!」
もう夏は過ぎゆき、季節は秋に移り変わっている、と考えたところで、途端に思い出した。
「梨?」
隣を歩いている雪風がその声に反応して顔を窺ってくる。
そう、梨。あの梨。果物の梨。美味しい、瑞々しい梨。
「金木犀が咲いてるってことは、梨の旬が終わってるんだよ。あー今年は食べ損ねたー」
毎年この時期の梨を楽しみにしていたが、今年は何をしていたのか食べ損ねてしまった。今年は家に梨が無かった、というのはどうも考えにくい。ということは、知らない間に食べられているのだろう。完全に忘れられたな。
「ひーたんは物知りさんだね」
雪風が満面の笑みで笑う。
その満面の笑みが、少し引っ掛かった。
「来年、一緒に食べような」
雪風の頭に手を置き、そう言うと、雪風の表情が若干強張った。
多分、良いことは考えていない。でも、その内容が全て分かるほどの読心術を身に付けてはいなかった。
「えっ」
下駄箱に着いてみると、奇妙なことに手紙が一通。
いや、まさか、そんな。
「ひーたんにラブレター!」
一瞬心の中で思ったことを、雪風が大きな声で吐き出した。
いや、確かに見た目はどう見ても雪風が言った通りのものだが、このご時世にラブレターを下駄箱の中に入れるような古風な女子はいるのか。
これが本当に自分宛ならば、果し状の可能性もなくはないが、そもそも、果し状を貰うほどの存在感も心当たりもない。
「どうしよう、どこのうさぎからだろう、ひーたんは渡さないんだから!」
「どこのうさぎって、うさぎ前提かよ」
一人でプチパニックを起こしている雪風をいつものように宥めたが、ラブレターや果し状があり得ないのと同じ位、差出人がうさぎである可能性はあり得ないだろう。
仮にうさぎからの手紙だとしても、うさぎは一人いれば充分だ。
その手紙の封筒を裏返してみると、知った名前が書かれていた。
「やっぱ入れ間違いだな」
なんと、このような古風なことをする女子が本当にいたようだ。今時珍しい。だが、残念なことに一つ右隣の下駄箱に入るはずだった手紙のようだ。
右隣の下駄箱へ入れ直してから、靴を持つ。
「帰るぞ、雪風」
帰り道、気にしてみるといたるところから金木犀の香りがする。
秋本番だな、と思いながらふと何気なく、いやに大人しい雪風を見た。
その瞬間、何か嫌な予感がした。
咄嗟に雪風の両耳を掴んで、違う方向へ向ける。
「変な電波は妨害」
何故かは分からないが、なんとなく変な電波な気がした。確信はない。雪風にいきなり何すんのーなんてどやされるかもしれない。
気のせいなら、それでいい。
でも、なんとなく、直感で。
「ひーたん」
雪風がこっちを見ている。
あ、この顔は。
「うち帰ったら耳外せよ」
やっぱり、当たってた。
変な電波拾ってやがったな。
「うん」
さっきとは一変して、雪風はどことなく、嬉しそうだ。
なんだなんだ、どうしたって言うんだ。
「ひーたんすき!」
「はいはい」
訳は分からないが、とりあえず、うるさい雪風に戻ったから一先ず良しとする。
*----------*----------*----------*----------*----------*
ヤヒコさんのお宅の「うさぎコンビ」の「ひーたん」こと、北月日京の方。
お題は「金木犀、手紙、梨」でした。
お誕生日に何がいいか、となったときに求められたのが「うさぎの二次創作」だったので、軽率に二次創作しましたが、うさぎコンビが分かる人じゃないと分からない話になっていますので、ご注意ください。
こちらが同じお題の「うさぎコンビ」の「うさぎ」こと、南野雪風の方。
雪風から見たひーたん
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