ふわふわ、揺れる。
ふわふわ、ふわふわ、揺れる。
白い綿毛。蒲公英の綿毛。
寒冬の冷たさを乗り越え、迎える暖春の風はとても心地よく、蒲公英の綿毛が揺れているのを眺めながら、もう春なのだと心が感じていた。
屋敷の部屋からは決して見ることは出来ないが、春の暖かさに誘われて、散歩をしようと庭に出たのは間違いではなかった。
蒲公英の群れは揃って白い綿毛を纏っている。
春というのは、様々な植物が姿を見せるとてもよい季節だ。その時季にしか出会えぬ花や草木は心を和ませ、穏やかにしてくれる。
少し強めの風が吹くと、蒲公英の綿毛が飛び出した。風に乗り、ふわふわと。
目の前を飛び去った綿毛は森の方へと進んでいた。
ふと、思い出す。
昔は、まだ幼い頃は、森はとてもよい遊び場だった。自然に触れ、降り注ぐ太陽の光のもと、時間の許す限り戯れたものだ。
久方振りに、あの森に入ってみよう。森の木々と、戯れたい。
そうと決まれば森に入るのが楽しくなる。綿毛を追い掛け、森の中へと足を進める。
「お客さんなんて、珍しいね。」
森の中へと足を進めると、なんとも不思議なところへ出た。昔はこんなところ、あっただろうか、と考える。何度も訪れたはずの森が、懐かしくもあり、初めて訪れた場所のような感覚すらする。
一目見ただけで、性別はわからなかった。顔も声も中性的で、身なりも、全体的に見て格式高いものではない。寧ろ、布一枚を羽織ったような簡素なものだ。年は同じくらいかもしれない。腕の中に持たれた溢れるほどの鮮やかな花がガーベラの花であることだけ辛うじて理解出来た。
何故この森の中に、いるのかすら分からない。
ただ、目が離せなかった。
目を、逸らすことが出来なかった。
雷が落ちたように、という表現を、以前本で読んだことがある。それを初めて実感した。そんなこと本当にあるわけがないと思っていた自分が間抜けに思えるほど、その表現は今の自分に最も適していると思った。
「そういえば、魔女がなにか言っていたような。」
とても優しい顔で、とても柔らかい声で、こちらを見る。
この暖かい春の日差しの中、氷漬けになったかのように動けない。動く気すら失せてしまう。ずっと、このままで、ずっとこのまま、永遠に見ていたいと思ってしまう。
魔女とはなんのことなのだろう。いや、そんなこと、どうだっていい。
腕の中に収まっているガーベラの花が揺れる。色鮮やかに。ひらひらと。
ガーベラの花言葉はなんだったっけ…。
最近読んだ本に載っていた気がする。確か色別の花言葉があって、色別ではなく、ガーベラとしての花言葉もあったのだ。なんだったのか、思い出せない。脳が思考を停止せてしまっている。
「あぁ…『運命が歩いてくるよ』だった。」
ふわり、と笑った。
その瞬間、雷どころの騒ぎではなくなった。天変地異だ。己の中の何かが変わってゆく。
あぁ、これは、一言で表すならばーーー。
「ということは、君が『運命』なのかな?」
ーーーーーーあぁ、思い出した。
ガーベラの花言葉は「希望」だ。
ということは、この子が、『運命』であるのと同時に『希望』なのだ。
そう、直感的に理解した。
*----------*----------*----------*----------*----------*
お世話になっている創作畑のヤヒコさんへ、捧げました。
お題は「ふわふわ、ガーベラ、森」でしたが、ガーベラがお題にあるのに、蒲公英を出したのは失敗したな、と思いました。
これはもうちょっとどうにか出来ただろうに…いつか大幅に加筆修正をしたいです。
ふわふわ、ふわふわ、揺れる。
白い綿毛。蒲公英の綿毛。
寒冬の冷たさを乗り越え、迎える暖春の風はとても心地よく、蒲公英の綿毛が揺れているのを眺めながら、もう春なのだと心が感じていた。
屋敷の部屋からは決して見ることは出来ないが、春の暖かさに誘われて、散歩をしようと庭に出たのは間違いではなかった。
蒲公英の群れは揃って白い綿毛を纏っている。
春というのは、様々な植物が姿を見せるとてもよい季節だ。その時季にしか出会えぬ花や草木は心を和ませ、穏やかにしてくれる。
少し強めの風が吹くと、蒲公英の綿毛が飛び出した。風に乗り、ふわふわと。
目の前を飛び去った綿毛は森の方へと進んでいた。
ふと、思い出す。
昔は、まだ幼い頃は、森はとてもよい遊び場だった。自然に触れ、降り注ぐ太陽の光のもと、時間の許す限り戯れたものだ。
久方振りに、あの森に入ってみよう。森の木々と、戯れたい。
そうと決まれば森に入るのが楽しくなる。綿毛を追い掛け、森の中へと足を進める。
「お客さんなんて、珍しいね。」
森の中へと足を進めると、なんとも不思議なところへ出た。昔はこんなところ、あっただろうか、と考える。何度も訪れたはずの森が、懐かしくもあり、初めて訪れた場所のような感覚すらする。
一目見ただけで、性別はわからなかった。顔も声も中性的で、身なりも、全体的に見て格式高いものではない。寧ろ、布一枚を羽織ったような簡素なものだ。年は同じくらいかもしれない。腕の中に持たれた溢れるほどの鮮やかな花がガーベラの花であることだけ辛うじて理解出来た。
何故この森の中に、いるのかすら分からない。
ただ、目が離せなかった。
目を、逸らすことが出来なかった。
雷が落ちたように、という表現を、以前本で読んだことがある。それを初めて実感した。そんなこと本当にあるわけがないと思っていた自分が間抜けに思えるほど、その表現は今の自分に最も適していると思った。
「そういえば、魔女がなにか言っていたような。」
とても優しい顔で、とても柔らかい声で、こちらを見る。
この暖かい春の日差しの中、氷漬けになったかのように動けない。動く気すら失せてしまう。ずっと、このままで、ずっとこのまま、永遠に見ていたいと思ってしまう。
魔女とはなんのことなのだろう。いや、そんなこと、どうだっていい。
腕の中に収まっているガーベラの花が揺れる。色鮮やかに。ひらひらと。
ガーベラの花言葉はなんだったっけ…。
最近読んだ本に載っていた気がする。確か色別の花言葉があって、色別ではなく、ガーベラとしての花言葉もあったのだ。なんだったのか、思い出せない。脳が思考を停止せてしまっている。
「あぁ…『運命が歩いてくるよ』だった。」
ふわり、と笑った。
その瞬間、雷どころの騒ぎではなくなった。天変地異だ。己の中の何かが変わってゆく。
あぁ、これは、一言で表すならばーーー。
「ということは、君が『運命』なのかな?」
ーーーーーーあぁ、思い出した。
ガーベラの花言葉は「希望」だ。
ということは、この子が、『運命』であるのと同時に『希望』なのだ。
そう、直感的に理解した。
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お世話になっている創作畑のヤヒコさんへ、捧げました。
お題は「ふわふわ、ガーベラ、森」でしたが、ガーベラがお題にあるのに、蒲公英を出したのは失敗したな、と思いました。
これはもうちょっとどうにか出来ただろうに…いつか大幅に加筆修正をしたいです。
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