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2026/04/05 00:55 |
g01---無題
雑然とした部屋。
机に二つの椅子。
向かい合わせになるように置かれたその椅子の一つには既に男が座っている。
その男は、刑事だ。
比較的まだ若く、これから成果を挙げるだろうと言える年頃。
刑事、秋吉はこの事態を真摯に受け止めていた。
そんな秋吉の表情は少し暗い。
何か思い詰めているような、そんな印象を受ける。
ただ机に向かい、呆然とどこか遠くを見ているようだ。
すると、部屋の扉の開く音が聞こえた。
その音に反応するように秋吉は音のする方を見た。
そこには、警官に連れられた一人の男の姿がある。
警官に連れられたその男は普段着のような楽な服装をしているが手元には手錠がかけられており、服装のセンスとのミスマッチさがよく分かる。
男は横目で秋吉を見ると、今度正面で柔らかく笑った。
そして、少し切な気な顔をする。
それは、刑事である秋吉と連れて来られた男、金橋との関係性にあった。
秋吉は左手をゆっくりと動かして警官に見せた。
すると警官は連れてきた金橋を一人置いて部屋から出て行った。
椅子に腰掛けていた秋吉は立ち上がり、その場に置き去りにされた金橋の手を掴み、長方形の部屋の隅へと金橋を連れて行った。
そこは、唯一部屋の監視カメラの死角である場所。
そして、肩を持ち勢いよく壁に抑えつける。
二人しかいない部屋の中に、金橋の手首にかけられた手錠の接触音が響く。
濁ったような、金属音。
秋吉は金橋を壁に抑えつけたまま、金橋の顔を見て呟いた。
小さく、小さく、本当に呟くという言葉にが正しいほどに。

「…多分、死刑だろう、って。」

死刑。
それが、この男の処罰として妥当だと考えられた結論。
賛成多数での死刑。
一刑事という存在でしかない秋吉にはどうすることも出来なかった。
ただ、その結論に身を任せるしかない。
裁判がまだであっても、裁判員の意見はほぼ決まっている。
金橋はその結論が分かっていた。
結果が出なくても憶測でそうなるだろうという予想が立てられたのだ。

「らしいな。そう聞いた。」

ただ冷静に、淡々と口を動かす。
だが、秋吉を見る眼はどこか切なく悲しそうに思える。
そんな金橋を見て、秋吉は唇を噛み締めた。
そして、腹の底から一番低い声を出す。

「…馬鹿野郎ッ…!」

その声は、少し掠れていて、少し歪で、少し悲しさを含んでいた。
金橋を抑えつけている手にも自然と力が入る。

「………ごめん…。」

金橋は小さな声で謝罪を口にした。
秋吉に聞こえればいいように小さく、小さく。
秋吉は更に抑えつけている手の力を強め、金橋に近付いた。
顔を近付け、身体を近付け、食い付くように金橋の唇に噛み付く。

「…んッ………ぁ、…ぅん…。」

金橋の甘い吐息が秋吉の耳に入る。
秋吉は金橋の唇を貪るように荒らし、角度を変え、何度も舌を絡ませる。
絡ませては離し、貪っては離す。
何度繰り返したか知れない。
ただ時間の許すまま、唇を貪り重ね、舌を絡め、甘い吐息を吐いた。

「………愛してる…。」

そう告げたのは秋吉の方だった。
ただ純粋に、愛している。
死刑になるような罪を犯した金橋を、刑事である秋吉が。
違う道を行けばもっと違う結末だっただろうと考え、無念さが溢れる。

「…愛してる…。」

二度目の愛の囁きは秋吉ではなく金橋だった。
互いに愛している。
それが分かっていながら、無情な結末は刻一刻と近付いて来る。
それが堪らなく憎い。

「…生まれ変わっても、一緒にいたいよ。」

そう告げたのは金橋だ。
切なく悲しい言葉だった。
直に来る死する恐怖と永遠の別れ。
それが金橋の中の何かを着実に壊している。
そんな中、やっと振り絞った最後の言葉がこれだった。
もう、迫り来る別れしかない。
最後にもう一度、二人は唇を重ねた。
その後、しばらくしてから最終結論が掲示された。
処罰、死刑。


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2018/11/11 01:05 | 創作BL / 秋吉と金橋

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