くんくん。この独特な匂いは。
なるほど、金木犀の匂いだ。
この香りがすると、秋を実感する。
「ひーたん、金木犀の匂いがするね」
あれ、そういえば、この感じ、前にどこかで?
はて?デジャブ?
隣を歩くひーたんを見てもひーたんはいつも通りだ。
「もう秋なんだなぁ…って!梨!」
そう思ったところで、ひーたんが大声で叫ぶからちょっと驚いた。
「梨?」
ひーたんの顔を窺いながら聞いてみる。
気のせいじゃない。確かにこの会話を前にもしたような。
「金木犀が咲いてるってことは、梨の旬が終わってるんだよ。あー今年は食べ損ねたー」
うん、ひーたんはまったく同じことを言っているみたい。
なるほど、これは何かがどうにか作用して、なんとかなってしまっているわけだ。
ということは、前と同じようにことが進むはずで、このあと、俺が言った言葉のあとに、ひーたんは同じことを言うんだろう。
「ひーたんは物知りさんだね」
前と同じようにそう言ってひーたんに向けて笑うと、ひーたんはやっぱり何かを考えているようだった。
ひーたんの手が俺の頭の上に乗る。
「来年、一緒に食べような」
やっぱり、ひーたんは同じことを言った。
そして、同じことをした。
来年の、約束。
ひーたんが言う言葉は分かっていたはずなのに。
ひーたんの言葉を遮ることも出来たはずなのに。
それでも、何も言い出せず、話を逸らすことも出来なかった。
そうこうしている間に、玄関へ着いた。
このまま同じように進むなら、ひーたんの下駄箱には入れ間違えられた手紙が入っているはずだ。
その手紙に驚いてラブレター、どこのうさぎからだと騒けば―――。
「えっ」
前はひーたんが出した言葉を、今度は俺が出した。
ひーたんは何食わぬ顔で下駄箱から靴を取り出して、履き替えている。手紙のことには一切触れない。
あれ?手紙は?
「ひーたん!」
思いのほか大きな声が出て、ひーたんは驚いたようだった。
だけど、そんなことには構っていられない。
「手紙入ってなかった!?ラブレター!」
俺がそういうと、ひーたんは少し呆れたような顔をした。
「は?なに、お前なんかしたの?言いたいことあるなら言えよ」
手紙なんて書かずに、普通に話せばいいだろ。
何も知らないひーたんはそういうけど、そういうことじゃない。
すぐさまひーたんの下駄箱を見ても何も入ってない。
入れ間違えられたラブレターが入っているはずだったのに、入っていないなんて。
まったく同じように進むと思っていたのに、まさかこんな展開になるなんて思っていなかった。
これはますます意図が分からない。
魔女の企みのひとつなのだろうか。
「帰るぞ、雪風」
下駄箱をずっと見ている俺にひーたんが声を掛ける。
いつもと同じように。
帰り道を歩いていても、どこからか金木犀の匂いがする。
おかしい。本当におかしい。
このまま歩いていたら、前と同じように魔女が来るだろうと思っていた。
魔女が来たら、魔女の話を押しのけてでもこのことを聞こうと思っていたのに、全然来ない。
一体どういうことなのか。
前と同じことを繰り返していると思っていたけど、そうではないみたいだし、意図が分からない。
魔女の仕業じゃないのか?いやでもそれだと余計に意図が分からない。
「雪風?」
気付けば、ひーたんが立ち止まっていた。
考え事をしていた俺に気付いたらしい。
「また変な電波受信してんのか?」
そう言いながら、俺の耳をくいくいと引っ張る。
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
むしろ電波受信するはずが受信出来てなくて困っているというか。
「じゃあなんだよ」
これをひーたんに説明するのもなぁ…なんて考えていたら、ひーたんは痺れを切らせたのか、耳を引っ張りながら溜め息を吐いた。
「うち帰ったら耳外せよ」
前と同じ言葉。
「耳ない方が好きだ」
「えっ」
それは、初耳。
耳だけに。
って!そうじゃない!
―――遅くなったけど、誕生日プレゼントだよ
途端に聞こえた、魔女の声。
誕生日プレゼントって、いや、なんていうか。
「…俺の誕生日…八月なんだけど…」
もう本格的な秋になっている。夏生まれの俺からすると遅刻もいいところだ。
いや、違う。遅刻とかいう以前にやっぱり魔女の仕業か。いや、わかってたけど。そうだろうと思ってたけど。いきなりなんでこんな。
「なんか言ったか?」
目の前で、ひーたんが俺を見る。
誕生日プレゼントって、いったいなにが、どこまで、そもそも。
夢か現実かすら分からないなんて反応のしようがない。
いや、もうやめよう。
考えることは放棄する。
これ以上考えても仕方ない。
とりあえず。
「ひーたんすき!」
「はいはい」
今ここに、ひーたんがいるからそれでいい。
*----------*----------*----------*----------*----------*
これまた、ヤヒコさんのお宅の「うさぎコンビ」から。
今年はちょっと忙しくしていて、お誕生日プレゼントのお題を聞きそびれていたので、奇しくも同じお題で再チャレンジです。
ただし、今回は追加テーマとして「再上映(リバイバル)」があったりなかったりします。
本当にリバイバルなのか夢なのかとか、その辺はざっくりと感じとってください←
プロットから完成までが一時間くらいなのですが、元の話があったからこそ一時間でなんとか形に出来たかなという感じです。
このお題もそろそろ飽きられる頃だと思うので、来年こそは違うお題を伺って、一味違うものを書きたいと思ったり。
うさぎコンビお好きな方はあくまでも二次創作なので、怒らないで。いやほんとごめんなさい。
この話の「一回目」がこちら。
なるほど、金木犀の匂いだ。
この香りがすると、秋を実感する。
「ひーたん、金木犀の匂いがするね」
あれ、そういえば、この感じ、前にどこかで?
はて?デジャブ?
隣を歩くひーたんを見てもひーたんはいつも通りだ。
「もう秋なんだなぁ…って!梨!」
そう思ったところで、ひーたんが大声で叫ぶからちょっと驚いた。
「梨?」
ひーたんの顔を窺いながら聞いてみる。
気のせいじゃない。確かにこの会話を前にもしたような。
「金木犀が咲いてるってことは、梨の旬が終わってるんだよ。あー今年は食べ損ねたー」
うん、ひーたんはまったく同じことを言っているみたい。
なるほど、これは何かがどうにか作用して、なんとかなってしまっているわけだ。
ということは、前と同じようにことが進むはずで、このあと、俺が言った言葉のあとに、ひーたんは同じことを言うんだろう。
「ひーたんは物知りさんだね」
前と同じようにそう言ってひーたんに向けて笑うと、ひーたんはやっぱり何かを考えているようだった。
ひーたんの手が俺の頭の上に乗る。
「来年、一緒に食べような」
やっぱり、ひーたんは同じことを言った。
そして、同じことをした。
来年の、約束。
ひーたんが言う言葉は分かっていたはずなのに。
ひーたんの言葉を遮ることも出来たはずなのに。
それでも、何も言い出せず、話を逸らすことも出来なかった。
そうこうしている間に、玄関へ着いた。
このまま同じように進むなら、ひーたんの下駄箱には入れ間違えられた手紙が入っているはずだ。
その手紙に驚いてラブレター、どこのうさぎからだと騒けば―――。
「えっ」
前はひーたんが出した言葉を、今度は俺が出した。
ひーたんは何食わぬ顔で下駄箱から靴を取り出して、履き替えている。手紙のことには一切触れない。
あれ?手紙は?
「ひーたん!」
思いのほか大きな声が出て、ひーたんは驚いたようだった。
だけど、そんなことには構っていられない。
「手紙入ってなかった!?ラブレター!」
俺がそういうと、ひーたんは少し呆れたような顔をした。
「は?なに、お前なんかしたの?言いたいことあるなら言えよ」
手紙なんて書かずに、普通に話せばいいだろ。
何も知らないひーたんはそういうけど、そういうことじゃない。
すぐさまひーたんの下駄箱を見ても何も入ってない。
入れ間違えられたラブレターが入っているはずだったのに、入っていないなんて。
まったく同じように進むと思っていたのに、まさかこんな展開になるなんて思っていなかった。
これはますます意図が分からない。
魔女の企みのひとつなのだろうか。
「帰るぞ、雪風」
下駄箱をずっと見ている俺にひーたんが声を掛ける。
いつもと同じように。
帰り道を歩いていても、どこからか金木犀の匂いがする。
おかしい。本当におかしい。
このまま歩いていたら、前と同じように魔女が来るだろうと思っていた。
魔女が来たら、魔女の話を押しのけてでもこのことを聞こうと思っていたのに、全然来ない。
一体どういうことなのか。
前と同じことを繰り返していると思っていたけど、そうではないみたいだし、意図が分からない。
魔女の仕業じゃないのか?いやでもそれだと余計に意図が分からない。
「雪風?」
気付けば、ひーたんが立ち止まっていた。
考え事をしていた俺に気付いたらしい。
「また変な電波受信してんのか?」
そう言いながら、俺の耳をくいくいと引っ張る。
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
むしろ電波受信するはずが受信出来てなくて困っているというか。
「じゃあなんだよ」
これをひーたんに説明するのもなぁ…なんて考えていたら、ひーたんは痺れを切らせたのか、耳を引っ張りながら溜め息を吐いた。
「うち帰ったら耳外せよ」
前と同じ言葉。
「耳ない方が好きだ」
「えっ」
それは、初耳。
耳だけに。
って!そうじゃない!
―――遅くなったけど、誕生日プレゼントだよ
途端に聞こえた、魔女の声。
誕生日プレゼントって、いや、なんていうか。
「…俺の誕生日…八月なんだけど…」
もう本格的な秋になっている。夏生まれの俺からすると遅刻もいいところだ。
いや、違う。遅刻とかいう以前にやっぱり魔女の仕業か。いや、わかってたけど。そうだろうと思ってたけど。いきなりなんでこんな。
「なんか言ったか?」
目の前で、ひーたんが俺を見る。
誕生日プレゼントって、いったいなにが、どこまで、そもそも。
夢か現実かすら分からないなんて反応のしようがない。
いや、もうやめよう。
考えることは放棄する。
これ以上考えても仕方ない。
とりあえず。
「ひーたんすき!」
「はいはい」
今ここに、ひーたんがいるからそれでいい。
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これまた、ヤヒコさんのお宅の「うさぎコンビ」から。
今年はちょっと忙しくしていて、お誕生日プレゼントのお題を聞きそびれていたので、奇しくも同じお題で再チャレンジです。
ただし、今回は追加テーマとして「再上映(リバイバル)」があったりなかったりします。
本当にリバイバルなのか夢なのかとか、その辺はざっくりと感じとってください←
プロットから完成までが一時間くらいなのですが、元の話があったからこそ一時間でなんとか形に出来たかなという感じです。
このお題もそろそろ飽きられる頃だと思うので、来年こそは違うお題を伺って、一味違うものを書きたいと思ったり。
うさぎコンビお好きな方はあくまでも二次創作なので、怒らないで。いやほんとごめんなさい。
この話の「一回目」がこちら。
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