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2026/04/05 00:55 |
e02---涙色の声と共に
快晴。
雲一つない、快晴。
天気が良くても、何も変わらない、いつもと同じ日常。
そう、いつもと同じ、日常。
いつもと同じように、起きて、身支度をして、学校への道のりを歩く。
何も、変わらない。
今日はまだ、何も変わらない一日のはずだった。



思い起こすと数日前、同じ学年の対照的な二人組に話し掛けられた。
話し掛けられたというのは最終結論であり、厳密にいうと違うと思う。
話し掛けられる更に数日前、その二人は別々に話し掛けてきた。
そう、別々に。

二人のうち、先に声を掛けてきたのは、やたらピアスと指輪をしているいかにも悪いことをしています、という風貌の男だった。けれども、その印象とは対照的によく笑う男だとも思った。怖そうな風貌とはどうも性格が結びつかないように思えた。
第一印象は、「面白い奴」だ。
更にその同日、今度はやたら背の高い、モデル風の男が声を掛けてきた。
金髪がよく目立ち、話し掛けられたこと自体に驚いた。
驚いたというか、驚愕、だ。
常に、本当に、終始笑顔を絶やさず、先立って来た男の笑顔も印象的だが、この笑顔も印象的だった。印象的というか、抜けない。
第一印象は、もちろん「笑顔の奴」だ。

そんな二人が、今度は同時に話し掛けて来たもんだから驚いた。
話し掛けられる理由も分からないまま、適当に話を合わせていたが結局最後まで何故話し掛けられたのか理由が分からない。
二人はある程度話すと満足したのか、にこやかに去って行った。

更にその翌日、今度の来客は上級生だった。
来客というと、それこそ語弊があるかもしれない。
二人組の男で、尚且つ上級生。
昨日までの同級生とは違い、流石に声を掛けられたときは今まで以上に驚いた。
更には、声を掛けてきた言葉が「そこのかねちゃん。」だ。
上級生の二人は、こちらを舐めるように見ていた。
そして、少し話をした。他愛もない、なんでもない話だったけれど、何故声を掛けられたのかだとか、そんな詳細は一切分からなかった。
だが、声と雰囲気で、最初に呼び止めたのが背の小さいやたら美人の先輩だということが分かった。
美人というか、プライドが高そうと言った方がいいのだろうか。初めて見る人たちだが、女王様と家来という図がすぐに頭の中に過った。
家来っぽい人、あとはやたら遠慮がちに話をする先輩だ。
二人の印象はそんなもんだった。
そして、今日。



今日は、普通の日だと思っていた。
今日もいつもと同じ、普通の日で、普通に昼休みを過ごしていた。
弁当も食べたことだし、iPodを鞄から取り出して曲でも聞きながら過ごそうかと思っていた矢先のことだ。
目の前に影が出来、さらにはその正体に驚いた。

「金橋?」

本当に、驚いた。
その風貌、雰囲気、醸し出すオーラ、情熱的な瞳。
何を取って見ても、自分が話し掛けられる要素など何もなかった。
何故、話し掛けられたのか分からない。
それは数日前から続いている奇妙な訪問者と同じだが、その比ではなかった、明らかに。

「ちょっといい?」

厚い口唇が言葉を紡ぐ。
思考が、正しく機能しない。
この男、何者だ。

「え、いいけど、なに?」

動揺を隠せず、眼はその男の顔を行ったり来たりと落ち着かない。
本当に、何故話し掛けられたのか分からない。
何か悪いことでもしただろうかと自分の行動を思い返してみるが、思い当たることなど何もない。
逆に言うならば、平凡に過ごしてきたこの日常のなかの異端である出来事といえば、招かざる訪問者くらいだろう。
彼もその一端なのだろうか。

場所を階段の踊場に移し、壁に凭れ掛かる彼と向かい合う。
すると彼は、今、街でよく聞く音楽のサビの部分を軽く歌ってみせた。

「この歌、知ってる?」
「う、うん。」
「ちょっと、歌ってみて。一緒に歌うから。」

いきなりそう言われて、どうしようと思ったが、とりあえず歌を紡ぐ。
あまりにもいきなりだったため、最初の出たしが少し遅れてしまったが、ちゃんと歌えていると思う。
何より、今までの訪問者は当たり障りのない話をしただけでこのようなことはなかった。
戸惑いが歌に表れていないだろうかとも考えたが、歌えることは気持ち良かった。
主旋律を一緒に歌うのかと思えば、彼はすぐに自分のパートをハモリに切り替えた。
一通り歌い終え、彼を見ると彼は先ほどまでの彼と違って見えた。
何より、その瞳が違う。どこがどうとは表現出来ないけれど、間違いなく先ほどまでとは眼差しが違う。
やはり、歌がいけなかっただろうかと萎縮しかけたときだった。
彼に名を呼ばれたのは。

「金橋。」

呼ばれた声が、先ほどまでよりも震えているように感じる。
それほどまでに歌がいけなかっただろうか。
音痴だと言われたことはないが、上手いとも思えない。
やはり、歌ったのがいけなかったのではないか。
ふと、頭にはそれしか思いつかなかった。
思い切って謝ってしまおうかとも考えた瞬間、彼は再度口を開いた。

「俺、お前に興味があるんだよね。」

その言葉に、驚く。
興味があるというのは、どういう意味だろうか。
この歌なのか、それとも歌う前、目の前に現れたときからなのか、話の内容がまったく理解できなかった。
興味とは、どういう意味だっただろうか。
頭が回転してくれない、いつの間にか停止した思考も停止したままだ。

「俺、秋吉迅矢。よろしく、金橋加弦。」

彼はそういい、軽く自己紹介をしたあと、ふんわりと笑った。
ただ、ふんわりと、優しく、本当に優しく。
ただ、笑った。

今日も何も変わらない一日だと、確かにそう思っていた。
だが、違った。
今日は、人生を変えるほどの分岐点である日だった。
人生を変えるほど、否、人生が変わった、日だった。


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2017/06/12 20:10 | 創作BL / 秋吉と金橋

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